さよなら御伽話(メルヘン)またきて現実(リアル)【完】
真珠のようなアラザンや、ハート型のチョコでデコレーションされたアイスは、観賞用としてずっとショーケースに飾っておきたいくらい可愛い。

和泉川先輩の手には何も握られていなかった。
あれ、自分の分は買っていないのか。
つまりこれは私にアイスを買ってあげる為に、わざわざここに来たと見なして良いのかな?
また自惚れそうになるから、あまり深く考えないでおこう。


「いただきます」


ほんのり桃色に染まったアイスを一口。
口の中に広がる仄かな苺の香りに、自然と顔の筋肉が弛む。

やっぱり美味しい。可愛くて美味しいとか最高かよ。
どうしよう、これ和泉川先輩にもわけた方がいいかな?
でもこのままじゃ間接キスになっちゃう。私は構わないけど、和泉川先輩に失礼だったら大変だし。
お店でもうひとつスプーンもらってきた方が……。

なんて思考を巡らせていると、隣に立つ和泉川先輩が不意に口を開いた。
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