結婚に愛はあるのか?
穏やかな時間が続くこと数分。

…けたたましい携帯の音が分娩室に鳴り響く。


「電源を切ってください」

分娩室の看護師や先生に怒られる。


「すみません」

陽介は慌てて携帯を切ろうとしたが、愛がそれを止めた。


「私も赤ちゃんも大丈夫だから、…それ会社からでしょう?

早く戻った方がいい」

そう言って陽介を急かす。


「でも・・・」

陽介はもうしばらく、ここにいたかった。



「そんな顔したってダメよ。…あなたは松田商事の社長でしょう?」

愛の言葉に、周りにいた人たちが驚く。

…仕方がない。松田商事は、それなりに有名な会社なのだから。



「・・・わかったよ、…じゃあ、また後で」

陽介は渋々そう言って、愛と赤ちゃんにキスを落とすと、

分娩室を出ていった。
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