憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 --------古文が終わり、鞄に荷物(と言っても、勉強道具ではなく、雑誌等々ですが)を急いで詰め込んでいると、

 「どうした?? そんなに急いで」

 前の席の沙希が、クルっと振り向いてワタシの机に頬杖をついた。

 「木崎センパイが校門で待ってるんだ。 急がないと。 待たせちゃうと・・・ねぇ」

 ワタシなんかを待つ事事態嫌だろうに、遅れたりしたら木崎センパイの機嫌が損なわれてしまう。

 ただでさえ嫌われてるのに、これ以上は阻止したい。

 「・・・なんか、木崎センパイの下僕みたいだね。 莉子」

 何故か沙希の方が機嫌を損ねてしまった。

 「ん??」

 「そりゃ、木崎センパイからしたら莉子は『木崎センパイの父親と不倫してる女の娘』だけどさぁ、木崎センパイだって『莉子の母親と不倫してる男の息子』じゃん。 お互い様じゃん」

 沙希の言っている事は尤もで、ワタシだって最初はそう思っていた。

 でも、木崎センパイとワタシとでは、事情が違う。

 ワタシには、木崎センパイが背負っている責任も傷もない。

 4歳から、自責の念にかられ続けている木崎センパイは、どうにも出来ない状況に、苛立って、切羽詰まっているのだと思う。
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