魔法がとけるまで
「…オレは…?」



「あなたは有名な…」



「…有名…な?」



「…ヒモ…です」



「ヒモ…っ!?」



座間さんが、大きく目を見開いて、ポカンと口を開けた。



『恋人』とか『婚約者』とか…自分に都合のよい嘘は、他にもあったハズやのに。私の口から出た言葉は『ヒモ』やった。


「ほな、あの社員証…」


「詳しいことは、退院してからゆっくり…」



「そう…ですね。今日、脳の検査はしたんですが特に問題なくて…。明日の朝には退院できそうなんです…。記憶はそのうち戻るやろう…って」



「では…また明日、来ます。ちょうど土曜日で仕事は休みなので…」



「…よろしくお願いします…」



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