魔法がとけるまで
「あっ!!ちょっ、ちょっと待って下さい!」



私は慌てて部屋に戻って紙袋を持ってきた。



「…座間さんの…」



「あ…どうも…」



座間さんは中身を見て、私に微笑んだ。



「それでは失礼します」


そう言って伊勢原さんは背を向けた。その後ろ姿を追いかけるように、座間さんも続いた。私は、座間さんの後ろ姿をぼんやりと眺めていた。



「あっ!!」



突然、座間さんがこちらに駆け寄ってきた。



「わ…忘れ物…でも?」


「いえ…。ヒモのことは2人だけの…」



座間さんは私だけに聞こえるくらいの、小さな小さな声で言うと、唇に人差し指を当てた。



2人だけの秘密を残して、座間さんは帰っていった。その瞬間に、魔法はとけてしまった…。



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