魔法がとけるまで
彼の気持ちと私の気持ち
「ラブホは冗談や。アイス、食べに行こか」



綾瀬さんと肩を並べてオフィス街を歩いた。ニッキューの営業所の近くにあるカフェは、朝まで営業していた。



「好きなモン食べや」



綾瀬さんは私の目の前にメニュー表を広げると、煙草に火をつけた。



「ガトーショコラ…」



「オマエ、アイスって言ってなかったっけ?」



綾瀬さんは、そう言って鼻で笑うと、店員さんを呼んだ。



「カフェオレふたつ、バニラアイス、ガトーショコラ」



ぶっきらぼうに注文した。でも、私が何も言ってないのに、カフェオレまで注文してくれている。


オレ様っぽいところはあるけれど、優しい人。それは数ヶ月付き合ってみてわかった。



「オレは、祥子が好き」


突然、鋭い視線を向けられた。



「私なんかの…どこが…し…伸二さんには…もっと相応しい女性が…」



「おらん」



「えっ!?」



「オレには祥子しか、おらん。オマエには誰かいてるんか?」



いてるといえばいてるし、いてないといえばいてない。



何も言えずに俯いた。そのうち、注文していたものが運ばれた。

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