君が為
私が眼を覚ましたのは、日のどっぷりとくれた夜だった。
また、見慣れない天井が目に映る。
冴えない頭でゆっくりと身体を起こすと、暗闇に一つの影があった。
壁に背を預けて、こちらを見ている。
「漸く、起きたか」
聞き覚えのある声。
私は、その人の名を口にした。
「藤堂さん」
ーーと。
当たっていたのだろう。
影はゆっくりと立ち上がると、部屋に灯りを付けた。
電気なんて物じゃなく、教科書で出てくるような【行灯】に。
油だろうか。嫌な香りが、鼻につく。
「ずっと、看ててくれたんですか?」
「局長命令だからな。逆らうような部下が居るなら御眼に掛かりたいよ」
口調はふざけていても、顔は全く笑っていなかった。
まだ、警戒されてるんだ。当然と言えば当然だけど……少し、な。
「あの後、どうなったんですか……処遇は、一体」
「質問は一つにしてくれよ、答える方の身にもなってくれ」
「……すいません」
素直に謝ると、藤堂さんは小さく息を付いた。
意味もなく、前髪を掻き上げる。