私が恋したのは女の子でした。
「ごめん……」

 うなだれる私を、麻里子がそっと抱きしめる。

「冗談よ。ちょっと困らせてみただけ」

「そうだよ。本気で言ったんじゃないって!」

 フォローする二人を恨めしげに見つめる私。

 こんなときにいじめなくたっていいじゃない。

「それにしても、なんでだろうね? その楓くんって、朱莉とあんなに仲良かったのに」

「仲良くしてても恋愛対象じゃないってこと? 男の子ってよくわかんないね」

 二人は私そっちのけで推論を交わす。

 私にだってわかんないよ。そんなこと。

 あんなにランチ一緒にしてたんだから、かえでくんに一番近い女は私だと思ってたのに。

 思い返すとまた涙が出てくる。

 苦しいよ……。

「ああ、もう泣かないの、朱莉。私たちがいるじゃない」

「麻里子、良いじゃない。泣かせてやろうよ。気が済むまでさ」

 二人の正反対な慰め方。どちらの気持ちも嬉しい。

 触れてくれる手は優しく、心を癒してくれる。

 私は二人の好意に甘えた。

 泣いて泣いて泣きまくったのでした。
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