ma cherie *マシェリ*
そんなオレの気持ちなんておかまいなしに、サキは言葉を続けた。


「せめて名前……知ってもらいたい。一度でいいから名前を呼んでもらいたいな……なんて」


言ってて恥ずかしくなったんだろうか。

サキはペロリと小さく舌を出した。


恋する女の子ってのは、みんなこんなに可愛いんだろうか。

その笑顔の眩しさに……オレは一瞬眩暈を覚えて、目を伏せた。




なるほどね。

あのチョコは佐伯さんのことを想って作ったってわけか。

どうりで大人っぽい仕上がりだったはずだ。


「ふーん」


オレは気の抜けた返事とともに、彼女に気づかれないように小さくため息をついた。



穏やかな昼下がり。

このままいつものように時間はゆったりと過ぎて行くんだと

そう思っていたその時。


ドアが開いて、女性のお客様が入ってきた。



< 23 / 278 >

この作品をシェア

pagetop