ma cherie *マシェリ*
どかどかと室内に入ってくる靴の音と、賑やかな笑い声が響く。


――マヒロさんだ。

その後ろには、同じくアルバイトの望月(モチヅキ)君がいた。


実はマシェリはホールスタッフにかっこいい男の子が揃っていることで有名らしい。

オーナーがルックスで採用しているともっぱらの評判だ。

そのせいで、スタッフ目当てにやってくる女性客も少なくない。

そんな中でもマヒロさんと望月君は特別人気があるらしい。


二人とも社交的で人懐っこくて、お客さんにも愛想良く接しているのも理由の一つかもしれない。


マヒロさんなんて誰にでも笑顔を振りまいているから、勘違いしちゃう女の子もいるんじゃないかな……。


――なんて考えてたら、チクチクと胸が痛い……ような気がした。

もう、なんなんだ。



「でさっ……アイツがさ……」
「うそっ、最悪やん!」


何の話をしているのか、マヒロさん達はゲラゲラ笑いながらあたしの前を素通りしていった。


何か話しかけられるかと、身構えていたのに……。

なんだか肩透かしを食らった気分だ。


――って、何あたしってば、ちょっとガッカリしちゃってるんだろう。

ほんと、わけわかんない。
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