ma cherie *マシェリ*
「ケーキも子供も大事。それは変わりねぇんだよ。どちらか一方だけが大事とかそんな単純な話じゃなくて。佐伯さんは今、奥さんは大丈夫だと判断したから来なかった。病院にまかせるしかない……って判断したんだよ、きっと」


確かにそうだ。

マヒロさんの言う通りだ。

あたしってば、感情的になって佐伯さんのこと責めたりして……。

なんだか自分がひどく子供っぽく思えて恥ずかしくなってきた。


「あたし……佐伯さんにひどいこと言っちゃった……」


「大丈夫だろ」


マヒロさんはポンポンと頭を撫でてくれた。

あったかいね。

マヒロさんの手はなんでこんなに温かいんだろう……。



分娩室のドアの向こうではまだ奥さんが陣痛と戦っていた。


「いったい何時間かかるんだろう……」


あたしはポツンと呟いた。


時々悲鳴のような叫び声が聞こえる……。

人が生まれるってこんなに大変なことだったんだ。

出産って命がけなんだ……。


あたしもいつかこんな風に子供を産む時がくるのかな……。


「なんだか怖い……」
< 73 / 278 >

この作品をシェア

pagetop