天使の贈り物 

16.キャンドルライト





奏介さんが再びギターと向き合いだして
私たちの時間も、ゆっくりと動き出した。


季節は廻って、
もうすぐ二度目のあの日が近づいてくる。


12月。
TVは、今年もプレギエーラの開幕を告げる。


そしてイベント初日。

私はバンドメンバーと待ち合わせして、
懐かしい場所を訪れることになってた。



「忙しい時期にすいません。
 今日はお休みさせて頂きます」

「はいよっ。
 彩巴ちゃん、気を付けていっといで」


2階の自分の部屋から慌ただしく飛び出し、
お店で仕込中の大将と女将さんに
挨拶をして、外に出る。


寒っ。



コートの中に首まですっぽり隠して、
両手を擦りながら、
そーすけさんの迎えを待つ。



クラクションを一つ鳴らして、
ハザードをつけて道端に寄せた車の助手席に
滑り込むと、温かいエアコンの恩恵にあずかる。



「ごめん。遅くなって」

「ううん。
 そーすけさんは遅れてないよ」

「そう」



車をゆっくりと発進させると、
いつものように悠生さんのお店へ。


悠生さんのお店には、
すでに翔琉さんたちも到着していて
そのまま、煌太さんの車に乗り換えて
懐かしい場所へ向かう。


駅前の立体駐車場に、
車を止めると……移り変わる景色に
キョロキョロ。




立ち並ぶお店の景色が変わってるのに
戸惑うのと同時に、
今も復興に向けて力強く動き出してるんだと
改めて自覚させられた。




「さっ、何処から行く?」

「とりあえず
 LIVEハウス」

「そうだねー。
 マスターの話じゃ、
 震災の日にリニューアルオープンさせるって
 言ってたよね」



そんな会話を交わしながら、
去年と同じように、
見慣れた街並みを歩いていく。




「おっ、来たなー。
 お前ら」


その場所に辿りついた時、
建て直しを終えて、
開店準備を一人、進めていた
マスターが手招きする。
< 102 / 178 >

この作品をシェア

pagetop