天使の贈り物 



「これって……」

「ごめんごめん。
 彩巴ちゃん、成実や俺にとっては
 大切な時間。
 もちろん、奏介にもさ。

 この曲は、俺らのバンドの曲。

 『傷』って言う曲名なんだけどな」



段々と激しくなるパッキングやリズム隊。
それに伴うように、
歌詞は切なく、晴貴さんのトーンも
かすれるように歌い上げて、
もどかしくなる様な曲。




私の知らない、
そーすけさんの時間がそこにあった。





俺らのバンド。

煌太さんはそう言った。




その時間には……
私だけが居ない。 






抉られるような痛みが
心に突き刺さる。





……何してるんだろう……。 






知れば知るほど……
そーすけさんは遠くなって、

知れば知るほど……
私は疎外感が強くなる。





私の知らない……
みくさんに醜く嫉妬してる
私がそこにいる。





こんなはずじゃなかったのに……。





「止めてください」



車内に響くように大きく叫ぶと、
煌太さんは、
びっくりしたように車を路肩へと寄せてくれる。

車が完全に止まったのを確認すると、
後部座席のドアを飛び出した。





私の悲しさに呼応するかのように、
ゆっくりと降りはじめる雨。




その雨は次第に強くなって
傘のない私の体に、
容赦なく打ち込んでくる。






……ねぇ……
どうしたら、いいの?




車内で聴いた……
「傷」だけが、
永遠と脳内をリフレインしていく。


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