天使の贈り物 




「彩巴」


成実が呼ぶ私の名に反射的に振り返ると、
ベッドの上で、泣き出した赤ちゃんを幸せそうにあやしながら
こう言った。



「彩巴、奏介のこと頼んだよ」って。


そーすけさんのことを、
そう言って貰えて、心が少し暖かくなった。



成実たち、あそこにいる人は皆、
多分……、みくさんのことも知ってるはず。


みくさんと、そーすけさんが二人
ずっと仲良くしてた時代も知ってるはず。


そんな人たちが、背中を押してくれたから……
私は私らしく、
そーすけさんの傍に居てもいいのかな?



ほんの少しだけど……
そーすけさんの傍に居てもいいんだよーって
お許しを貰えた気がした。



「うん。
 有難う、成実」



成実に背中を押されて、
私は病院の廊下を
そーすけさん目指して走り出す。

いつまでたっても、追いつかない私に
そーすけさんは
私を立ち止まって待っててくれた。



「お待たせ、そーすけさん」

「行くか」



差し出された手を、がっちりと掴んで
病院を後にした。



新しい命が生まれた記念日。


今はもう、この世界に居ない
晴貴さんの忘れ形見が生まれた日。


私はちょっぴり
穏やかな心になれた。

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