アイスクリーム ~たくされた想い~
分からない
ーハァハァハァ。

逃げた先は屋上。
まあ特に意味はないけど、屋上に吸い寄せられた。そういうことにしておこう。

なんであんなやつに。
あーゆーのが私の中で一番嫌いなタイプ。
人の心を見透かしたようにしてるやつ。

あーっ!もうイライラする!

1人で感情と格闘してると…

(ーガチャリ)
屋上のドアが空いた。振り返るとそこには渡辺 飛鳥。

はあ、追ってきたのか。

『遠山!ゴメン!…その、勝手なこと言って。』
彼は申し訳なさそうに頭を下げた。
『…うん。』
こっちまで、申し訳なくなってくる。
まあ、いいか。と思っていたら…

『でも…』
『え?』
『ホントに君は笑えないんでしょ?』
あーあ。めんどくさいな…
『教えてほしい。なぜ、笑えないのか。

『あなたに教える必要ない。』
そう答えたら、
『俺が力になるから!』
…何言ってんの?この人は。
『だから、教えてほしい。』

真剣な顔をする彼に無性に腹が立ってこういった。
『…あんたみたいなやつが一番嫌い。』
『え?』
キョトンとした顔で声をだした。
『…あんたみたいに幸せそうで、人の気持ちを見透かしてるようなやつが一番嫌いだって言ってんの!私の気持ちなんか分からないくせに!』
これで、こいつも何も言わなくなるだろう。
『…分からない。だから、教えてほしい。きっと、辛かったんでしょ?相談できる人もいないし、誰も私の気持ちなんか分かるはずない、って。だから、僕、君の辛かったことを分かちあいたい。全てを話してくれとは言わない。でも、せめて、泣いてもいいんだよ?』
そう言うと、私を抱きしめた。
さっきまで嫌いだったやつの胸なのに、なぜかすごく安心した。あったかかった。すると、自然に口が動いた。

『…分からない。』
『え?』
『分からないの。なぜ笑えないのか。アルバムを見ると、5歳の頃まで笑ってた。みんなと同じように。でも、6歳の写真からは、泣いたり怒ったりしてる写真はあるのに、笑ってる写真だけなかった。原因は、分からない。』
『そっか…

じゃあ、思い出そう!』
『え?どうやって?』
『…それは、分からないけど、きっと、いつか見つかるよ!俺が一緒に探す。どうして、遠山が笑えなくなったか。な?』
『…うん!』
初めて人を信じてみようと思ったし、初めて、心から安心できた。

見つかるのかな…
笑えなくなった思い出。
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