春に想われ 秋を愛した夏


「ねぇ、最近どうよ」
「ん?」
「会社にいい男は現れないのかい?」

お互いに彼氏がいないため、会うと必ずそんな会話が一度は交わされる。

塔子の勤める会社は、女性社員が多いらしく。
出会いもなかなか難しいところらしい。

かと言って、男性社員がわんさかいるから良いというわけでもない。
塔子自身、モテないはずはない容姿なのだけれど、性格的に男に対して厳しい目線をもっていて、軟弱なのはすぐにお手上げで離れていくとか。

うちの会社にはそれなりに男性社員はいるけれど、中身が伴わないのがいくらいたって、ジャガイモ・かぼちゃだ。

「相変わらずだよ。この前、契約で他部署に一人入ってきたけど、かなりとっつきにくい感じ。用事があって話しかけたけど、あんまりいい印象もなかったしね」

そこまで話して、秋斗の顔が浮かんだ。

秋斗という人間は、今まさに話した契約社員に抱く感想と似ているところがある。
いつも何かと戦ってでもいるかのように攻撃的な視線をしていて。
無闇に近づこうとすると、ばっさりと切られる感じの悪い対応を平気でする。
まず話し方がつっけんどんだから、よくそんなんで周囲と揉めたりしないよ。と思ってしまうぐらなのだ。

ただ、親しくなった相手には、とことん親身になるところがある性格だからか、友達は意外と多い。
寧ろ、物腰が柔らかくて人当たりの良い春斗の方が、どちらかといえば友達は少ない。
まぁ彼の場合は、人見知りが激しくて、なかなか相手の胸に飛び込むことができないというのが原因なのだけれど。


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