悪魔ニ花束ヲ
いや、特筆すべきはそこじゃない。何故、あたしはこの不可解な人物と休日であるのに関わらず肩を並べているのか。


それは実に29時間と18分前に遡る―――――


――――――いつもの放課後、魔王が部活動に復帰した事で静かな一人だけの時間を確保したあたしは、図書室本棚に囲まれた死角だらけの隅いつもの指定席で本を読んでいた。

そんな視界が強烈なハンドパワーによって無理やり前方を向かされる。
目の前には、端正な顔をした王子。ひげが似合いそうだと僅かに余計な事を考える暇なく、

「明日。昼1時、タコ公園。一秒でも遅れたら、君の平穏は永久に訪れない」


王子の薄い口元は、悪魔のそれとしか思えないトーンで絶対命令を下した。
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