強引男子のイジワルで甘い独占欲


朋絵が店内に入ってきた時。一番最初に表情を窺っていたのは慎司だったから。

あんなに私に拘ってたハズなのに、朋絵が気まずそうな視線を向けたのは私じゃなくて慎司だった。

それだけで朋絵の気持ちに変化があったんじゃ……なんて考えるのは安易すぎるけれど。
朋絵が付き合い始めた頃と今で、慎司に対する気持ちが少しは変わったんだと思う。

ただ利用しただけで、今もその気持ちは変わらないなら、あんな風に慎司の顔色なんて窺わない。
どうでもいいなら慎司が今どんな気持ちでいるかなんて気にする必要もないんだから。

「そういう事だから、あとはふたりで話したら。
……でも、私も少しだけ話したい事があるんだけど、いい?」

なんだかふたりの会話に割り込むようになってしまって申し訳ないとは思ったけれど、私の方の問題を先に片づけさせてもらう事にする。

何かを警戒しているのか。
少し考えた後頷いた朋絵を見ながらゆっくりと口を開いた。

「朋絵、私の事が嫌いだってこの間言ってたけど」

朋絵の眉が怖がっているようにぴくりと動いたのが分かった。

「嫌いならそれでいいよ。親戚の集まりだってお互い理由つけて行かなくなれば、会う事だってなくなるだろうし。
そうすれば、朋絵の気持ちだって落ち着くでしょ」

問い掛けたつもりだったけれど、朋絵は頷く事はしないで目を逸らし俯く。
まるで、怒られてる子どもみたいに、朋絵の姿が小さく見えた。


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