強引男子のイジワルで甘い独占欲


だけど、入社してからずっと、安いし楽だからって理由で社食で食べてきたから知らなかったけど、休憩室って結構な穴場だと思う。
五十人くらい座れるだけのスペースがあるのに、毎回十人くらいしかいないし、先週の木曜日なんて四人しかいなかったし。

最初は少人数だと沈黙が気になるかもとか思ったりもしたけど、慣れてしまえばなんて事ない。

各々食事を済ませた後は、すぐ出て行ったりテレビを見たり雑誌を読んだりと、好きな過ごし方をしているし私もそうしている。
テレビを見てぼんやりしたり携帯をいじったり、文庫本なんかを読んだり。
食堂だと人が多すぎてあまりゆっくりできないけれど、休憩室だとそれができるし実際時間がゆっくり進んでいるような感じがして、ここ数日のお昼休みは結構充実している。

コンビニで何か買うと社食よりも少し高くつくのが難だけど。
それでも、毎朝コンビニに寄る事をやめないのは、どうしても食堂に行きたくない理由があるからで。

あまり気にしないようにしているつもりなのに、ただ気まずいからって理由で食堂に行かないだけなのに、多分本音は違っていて。
結局は慎司との事に縛られたままの自分がいて。

食堂ではなく休憩室に向かいながら、その事を思い知らされて……思わずため息がもれた。

充実した昼休みも快適なスペースもいらないから時間を戻せたらなんて。
まったく。少女漫画じゃないんだから。

そんな風に茶化してバカバカしいと笑おうとしたのに笑えなくて……結んだ口をきゅっと引いた。




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