電波的マイダーリン!





……る、直前に抱き止められた。


ぬくもりで、誰なのかはすぐにわかった。


顔を上げ、名前を口にする。






「…か…カイト…」







あたしの、泣きたいのに涙すら出ない最悪な顔を見下ろし、カイトは眉根を寄せる。




「…千早…どうしっ」

「カイトォ…ッッ!!」


カイトの言葉を遮って、あたしはカイトに抱きついた。

カイトは驚いたようにあたしの頭に手を回し、困惑したようにあたしのことを呼ぶ。


「…千早…?」

「…イヤだ」

「なに…」




「家に帰りたくない…ッッ!!」




ギュッとカイトの胸板に顔を押し付ける。

我慢していた涙が次々に流れ出してくる。


「…もうイヤだ…イヤだイヤだ…イヤだよぉ…
…お母さんなんて大嫌いだ…ッッ!!!!

…カイトと居たい…ずっと一緒に居たいよぉ…ッッ!!!!」


カイトの手が、スッとあたしから離れる。

それからあたしを離し、次いであたしの右手をグッと掴んで引っ張った。

唇が触れそうなほど顔を寄せ、カイトは真剣で微かな上目遣いであたしを見つめ――…












「…じゃあ、逃げる?」










…――甘く静かな声で、そう言った。







< 226 / 375 >

この作品をシェア

pagetop