電波的マイダーリン!




と言っても、ここはもう小町さんは住んでいないらしい。


「ちょっといろいろあってさー。まだ引き払ってないんだよね、住んでないのに」


「だから自由に使っていいよ」と。

やっぱり、誰にでもいろいろあるんだな…なんてちょっと思った。




小町さんが去ったあと、あたしは部屋に置いてあったソファーに膝を抱えて座っていた。

カイトはそのソファーに寄りかかって座っている。

瞼は伏せられていて、何を考えているかよくわからない。



長い沈黙が過ぎ、突然カイトが口を開く。


「…何があった?」


唐突すぎる質問に、あたしは「え?」と聞き返す。


「何って…どれのこと…?」


そう、いろいろありすぎて、カイトがなんのことを指して言っているのかわからなかったのだ。

カイトは肩越しにあたしの方を向き。


「千早の過去。家族と、何があった?」

「…過去…」


復唱するあたしに、カイトが頷く。

何があったっけ。

思い出したくない。


…でも、メリットのない逃走劇に付き合ってくれているカイトに、何も話さないなんて、そんなズルいことはない。


だからあたしは、ゆっくりと、深呼吸をしながら話し出す。





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