真紅の空
身代わり







はっ、はっ、はっ、と大きく肩で息をする。


一度目を強く閉じてもう一度開くと、
そこはもう仁の部屋じゃなかった。


なんだか行き来する時間が短くなったようにも感じる。


それは何故だろう。
あたしが仁に酷いことを言ったから?


本当に自然にポロリと零れ落ちた言葉だったけれど、
あれは仁には酷な言葉だったと思う。


仁はどうしただろうか。
今も向こうにいるあたしに、何か言っただろうか。


仁はあたしがこっちに来ているということが分かるのかな。
仁に何も弁解出来ないまま、こちらに戻ってきてしまった。


どうしよう。仁、泣いてた。
あたしの前で泣くなんて、初めてかもしれない。


「由紀殿。どうされました?」


「のり、あき……くん」


「はい?」


目の前に則暁くんがいた。


外は暗いのだろうか。
蝋燭の明かりが灯されていて、その炎がゆらゆらと揺れている。


今は、夜。暁斉はどこにいるのかな。


「あの、暁斉は?」


「暁斉様はお部屋におります」


もう暁斉は驚かないのかな。
あたしは飛ぶ度に頭が追いつかずに戸惑ってしまう。
そういうところ、暁斉のほうが大人だと感じる。


もう何回目なんだ。
もうそろそろ慣れたっていいだろうとも思うけれど、
やっぱりこんな非科学的なこと、
慣れるほうがおかしいとも思う。


そうだ、暁斉が変人なだけだ。


「由紀殿」


「えっ?あ、はい。何?」


突然名前を呼ばれて目を上げると、
則暁くんが真剣な瞳でこちらを見つめていた。


こうしてみると、暁斉に似ていると思う。








「貴女様は、暁斉様を好いておられますか?」









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