真紅の空
その名を呼ぶ声





「則暁。随分短い挨拶だったようだな」


「申し訳ございません。止められず・・・」


「ちょっと、則暁くん。謝らないでよ。
 あたしが悪いんだから」


「いえ。私の役目ですから。
 このお方、名は春日由紀殿。異国の姫かと・・・」


「・・・ゆき?」




長屋に着いて、あたしと暁斉、そして則暁くんの3人で
向かい合っていた。


やっぱり変だよ。


“由紀”って何がおかしいの?


眉を顰めた暁斉の顔を見て、
あたしはむすっとした。




そんな顔したいのはこっちよ。


こんな変なとこ来ちゃって。


ていうか、ありえないことが起こっちゃって・・。




あたしがぼーっとしていると、
腰に誰かの手が触れた。



「な・・・っ!?ちょっと、何急に!!」


手をかけていたのは則暁くんで、
突然のことにびっくりして叫んだ。


則暁くんはあたしが叫ぶと俯いて頬を赤らませた。


ねぇ、則暁くん。


それでもこの手が離れないのはなんで?


あたしがぎゃーぎゃー騒いでいると、
暁斉があたしの口を手で塞いだ。


「煩い。変な気をおこすな。じっとしてろ。
 お前には恥じらいというものがないのか」


や。


恥じらいがあるから叫んだんですけど・・・。


むすっとして口を閉じると、
則暁くんが声をあげた。


< 27 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop