真紅の空



「おい」


声がしてはっと我に返る。
すると目の前には暁斉が立っていた。
鎧姿の暁斉はなんだか大人びて見える。
ぼうっと上から下まで眺めていると、肩を掴まれた。


「絶対にここから出るな。ここなら安全だ」


「でも、暁斉は……」


「俺は行かなければならない。信長公のために。
 大丈夫だ。帰ってくる」


にやりと口角を上げて笑ってみせる暁斉は、
家臣を数名従えて馬に乗り、屋敷を出て行った。


その場にぺたりと座り込む。
戦と聞いて体が震えた。
あの本物の刀で切り合うんでしょう?
もしかしたら、暁斉が命を落とすことだってある。
ドラマでしか見たことがないけれど、
ここはその本物の場所なんだから、何が起こるか分からない。
そういうことなんだ。遊びじゃないんだ。みんな、必死で……。


「由紀殿。危ないのでお部屋の中に」


「の、則暁くん……」


どこにいたのか、いつの間にか私の隣に立っていて、
その手であたしの肩に触れる。
人に触れられてようやく体の震えがマシになって立ち上がる。
則暁くんに連れられて部屋の中に倒れ込むように入ると、
則暁くんは襖を閉めてにっこりと微笑んだ。


「由紀殿は何も心配する必要はありません。
 私がここにおります」







「あいつ……死ぬの?」








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