【完】こいつ、俺のだから。
「違うよ彩。俺はもう、未練なんてない」
穏やかで、どこか真剣味も含んでる先輩のその声が、この空間に静かに響いた。
「やっと謝ることができたんだ。大切だった子に」
先輩の向ける視線の先にはあたしがいる。
優しさに溢れるその瞳の中で、あたしは確かに笑うことができた。
だから……
「あの、彩先輩」
おずおずと、彩さんに声をかける。
すると彼女は、くるりと振り返りあたしと視線を合わせた。
「あたし、先輩のこと好きでした。
でも今、新しく好きな人いるんです。その人のことが大事なんです」
……誤解しないでほしい。
あたしが好きなのは先輩じゃない。
そして先輩が好きなのも、もうあたしではないことを。