【完】こいつ、俺のだから。
ポツリ、独り言をつぶやくと、
「仁菜ちゃん……?」
背後から声をかけられ、びっくりして振り返ってみると、前野さんがいた。
「ま、前野さん」
「どうかしたの?」
……いや、それあたしのセリフっていうか……。
10月の空は、日が落ちるのが早い。
こないだまでまだ明るかったこの時間も、もう夕日が傾いている。
オレンジ色に染まる彼女のまぶたは、少しだけ赤い気がした。
「前野さん、泣いたの?」
「……え?」
「目が赤い」
図星だったようだ。
前野さんは少し気まずそうに目をそらしながらつぶやいく。
「ごめん……。仁菜ちゃんいるってことは分かってたんだけど、どうしても言いたくて、佐野くんに告白しちゃった」
「……」
「……もう、フられちゃったけど」