引き籠もりの双子の姉を救った俺。







「いただきます」



台所から取ってきた小さめのフォークで、
タルトの端を切り、口へと運ぶ。


由紀は上目遣いで、
そわそわと落ち着かない様子でタルトを見ている。





「どう…?」



タルトを咀嚼している俺に問い掛ける。



すごく不安そうで…可愛い。




「めっちゃ美味しいです」



そう言った途端、華やかな笑みを浮かべて、
良かったぁと胸をなで下ろした。



それから、チーズタルトを食べる俺を
真剣な面持ちで観察(?)する由紀は、

ふとこんなことを口にした。





「うちのお兄ちゃんね、
わりかしほんとに女ったらしなんだ…」



「まぁ、そんな感じした」



李人さんの人懐っこい笑顔を思い出す。

かなり人気がありそうな印象だ。




「最近は、一人暮らししてるから
分からないけどね…。

広樹くんのお姉さんが、心配で。

高校生だから、さすがに変なコト
しないとは思うんだけど」



「まぁ、由紀の怖〜い監視もあるし、
そういうのはないだろ」



「広樹く〜ん?」




由紀は冗談めかして口をとがらせた。




「その顔こわッ……嘘嘘、ほんと嘘!」




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