戦場のバレンタイン
「そうだ! あいつらを許すな!」

「降参なんかするもんか!」

「あんなヤツら、人間じゃない! 絶対に殲滅させてやる!」

 そんな声が教会を埋め尽くす兵士たちから口々に上がる。

「アレン、これで力をつけて」

 その優しい言葉と共にエリィが渡してくれたのは、チョコレートだった。

 ただの板状で、色気も素っ気もないものだが、今では貴重なものだ。

 どこにこんなものを隠し持っていたんだか……。

「ありがとう、エリィ。頑張るよ、キミのために」

 エリィからチョコレートを受け取り、その身体を強く抱きしめた。

 誓うよ。絶対にあいつらに勝ってみせる。そう耳元で囁いた。

 それは2月14日のことだった。

 聖バレンタインの伝説が脳裏をよぎる。

 その日を境にして、俺たちの勢力は目覚ましい戦果をあげるようになった。

 全ては愛する者のために――。

(終わり)
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