戦場のバレンタイン
「ダメですよ、奥さんは大事にしないと」

 そう言って微笑みながら、食事を差し出すのはピーター牧師だった。

 食事と言っても、単なる栄養補給のみで味など考えられていない固形食糧。

 そんなものしか今の俺たちは食べられないのだ。

 ピーター牧師は、この教会を俺たち解放同盟軍に提供してくれた貴重な支援者だ。

 そして、先日行われた俺とエリィの結婚式で司式を引き受けてくれた。

 彼が結婚式を執り行ったのは俺とエリィだけではない。

 何組ものこの軍の兵士と看護師のカップルを結びつけてくれた彼は、密かな英雄なのだ。

「あー、うん。大事にしますよ。でも、今あいつが必要なのは俺じゃないでしょ」

「そんなこと言って……。愛想尽かされても知りませんよ」

 にこにこと笑みを浮かべている牧師には頭が上がらない。

 俺は彼がくれた食糧を口の中でふやかしながら、しばしの休息に心を落ち着けていた。
< 3 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop