戦場のバレンタイン
「解放同盟軍の諸君。我々は歴史的大罪人を捕獲することに成功した。この者の犯した最大の罪、それはヒューマノイドと人間との結婚を認めたこと」

 そんな言葉から演説を始める敵の首領。そして、続けて言いがかりとも言えるようなピーター牧師の罪名を次々と挙げていく。

 そうなのだ。実は、俺たち解放同盟軍が求めているのは、ヒューマノイドと人間との結婚を認めてもらうこと。

 それ以外にもいくつか希望はあるが、主に重要なのはその一点だけだった。

 度重なる世界大戦で、世界の人口は200年前の10分の1に減っていた。

 しかも、戦場に出る男たちよりも、家に残る女性や子供の方が死ぬ確率が高かった。

 気付けば、女の人口は男の半分ほどもなかった。

 そんな状況下で、精巧に作られた女性型ヒューマノイドは、残された男たちにとってかけがえのない存在に昇格していた。

 主に戦場で看護師として働くようになった彼女たちは兵士たちの心のオアシスになっていた。

 女性型ヒューマノイドと結婚したがる男が増える一方で、あくまで人間は人間同士でつながるべきだとする勢力が力をつけていく。

 いつしか戦争の火種はその点に絞られていった。
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