リトライ。


「いち、に、さんし」

「ほら一年、声が小さいぞ」

「はいっ!」


学校の外を空が茜色になるまで走り、その後はハンドリングをする。

首から腰、足までボールを円のように回転させながら、右手から左手、そして右手に戻るように受け渡す。


外練は体力作りや基礎練習だけ。


つまらねぇな。

早くシュートを打ちたい。


「3セット出来たやつから終わっていいぞ〜」


俺は今日のノルマを終わらせるとボールを持って部活室に戻った。


「おつかれーっす」


タオルで汗を拭きながら思い出す。


『あのね、私本当はバスケが嫌いなの』


彼女が嫌い、って言った時、顔が苦しそうだったことを。


本当は嫌いなんて口にしたくないんだって、心が言ってるように思えた。


たぶん気のせいじゃないと思う。


だって本当に嫌いなら、バスケットボールを持ちながらあんな楽しそうな顔しないから。



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