first love~世界で一番素敵な初恋~
劇の練習は結局夜中まで続き、気付けばベッドにもたれかかりながら二人寄り添って眠ってしまっていた。
「夕食にいらっしゃっていないと伺っておりましたが、二人で一緒にいらっしゃいましたか。」
神谷さんは夜中に帰宅して、夕食を食べていないとコックに言われ私たちを探しに来てくれたのだ。
神谷さんはタオルケットを取り出し掛けようとすると、私が持っている台本に気付く。
「劇の練習をしていらっしゃったのですか。」
そう言って台本を取って見ると、表紙には『白雪姫』と書かれていた。
「白雪姫………」
神谷さんはキャストの名前の欄を見てみる。
すると…………
白雪姫………島崎唯那
王子様………西園寺龍我
「唯那様が白雪姫で王子様が龍我様………
あの頃と一緒ですね………」
神谷さんは昔の西園寺を思い出す。
幼稚舎の時も学芸会で白雪姫をすることが決まり、王子様役に選ばれたお坊ちゃまは毎日、帰ってくると台本とにらめっこをして一生懸命練習してましたっけ。
私が白雪姫のセリフを言って、その後に続くお坊ちゃまは顔を真っ赤にして一生懸命練習されていました。
龍我様が演じられる王子様は最後のシーンだけだったんですが、”唯那ちゃんが頑張ってるから僕も頑張るんだ”
そうおっしゃっていたのを今でも覚えています。
「唯那様が龍我様の前から居なくなってから、また唯那様と白雪姫を演じることが出来るなんて、あの頃の龍我様は思いもしなかったでしょう。本当によかったですね、龍我様……」
神崎さんはそう言うと、台本をテーブルの上に置いてから静かに部屋を出た。