星の音 [2014]【短】

「よく思い返してみると、昨日の喧嘩は私が悪かったから……。ちゃんと会って謝ろうと思います」


きっぱりと言った女性が、小さな笑みを浮かべた。


「きっと、彼もあなたを待っているんじゃないですか？」


「それは、わかりませんけど……。でも、そうだと嬉しいです」


自信無さげに苦笑しながらも、その瞳にはもう迷いは無いようだった。


「この詩集を読んだら、彼と過ごした日々の事をたくさん思い出しました。彼を大切に出来ていなかったから、きっと些細な事で喧嘩ばかりしていたんだと思います……」


その証拠に、女性は頭の中は恋人でいっぱいだと言わんばかりの顔をしている。


愛おしい人の事を想うその表情はとても可愛らしく、彼女ならきっと大丈夫だろうと思わせた。


「ちゃんと仲直り出来るといいですね」


「はい」


頷いた女性に傘を差し出すと、彼女は首を小さく横に振った。


「平気です。もう、雨は止んでますから」


その言葉通り、いつの間にか雨が止んで夕陽が空を彩っている。


激しい雨だったのが嘘のように思える空模様は、まるで女性を後押ししているような気がした。