意地悪な君に



しかし……


ホント、私以外のコには愛想がいいよね。


ニコニコと微笑みかけて、取り囲む女のコ達の相手をしている悠先輩は、私と話している時とは全然違う顔で。


“ありがとう美味しいよ”


私には、あんなに優しく話してくれた事なんてあったっけ…?




何かちょっと……
気に入らないな……



ぼんやりとその光景を眺めながらそんな事を思っているうちに、周りを取り囲む女の子達ですっかり悠先輩の姿は見えなくなってしまった。




――――

――――――――



10分以上もそうやって囲まれていただろうか。


いつまでやってんだ、馬鹿。


私の殺気を感じ取ったのか、悠先輩はやっと腰を上げた。



「ごめんね、そろそろ行かなきゃ」



そう言って、やっと人垣から抜け出した悠先輩は、疲れた顔で私の側に来ると私にしか聞こえない声で呟いた。


「オマエ、よくもあんなとこに置き去りにしてくれたな……覚えてろよ。」

「えーー喜んでたんじゃないんですか?」



無意識に敬語に戻った私に、悠先輩は心底イヤそうな顔をした。



「うわ…裏表ある人、コワイ」

「るせー」


廊下へ出て歩き出した悠先輩と木下先輩につられて、私も一緒に歩く。


「まだ見えてるからな。素は出さない。」

「どーゆうプロ意識ですか、それ」


全く…呆れてしまう。


『明日も来てくださいね~』


今出てきた1-Cの廊下の窓からそんな声がかかると、悠先輩は振り返ってニコッと笑って手を降った。


だから、どんだけよ。



「木下先輩、悠先輩ってずっとこんな感じなんですか?」


ちょっと飽きれ気味に木下先輩に聞いてみると、意外な答えが帰ってきた。


「ん~そうだね、前からこんなだよ。一時期は落ち着いてたんだけど、最近はまた磨きがかかったね」



やっぱり、こーいう人は、昔からこうなんだ……



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