【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「いい顔してるな」

だらしくなく緩んだ表情をしている気がするけれど、気持ちがよすぎて表情を引き締めることなんて出来なかった。そんな泰菜の顔を見て法資はこそばゆそうに目を細める。


「切羽詰ったときの顔も色っぽいけど、あれだとつい苛めたくなるからな」


気持ちいいか?と尋ねてきた法資の指先が、輪郭に沿って遊ぶようにすべっていく。いつもの意地悪ではなく、もっと穏やかな問いかけだったから素直に頷くと、法資がやさしく微笑みながら額にキスを落としてきた。


「……だろうな。目ぇやばいくらいとろん、てなってる」


指摘されたことが恥ずかしかったけれど。


「……わたしのこと、こんなしあわせにしてくれるの、法資しかいないよ……」

与えてくれるものを少しでも返したいと思って告げると、「馬鹿。おまえそれ言ったら今日徹夜コースになんだろ」と、法資は怒るような困るような顔になった。

「男殺しだよな。……あんま煽ってくれるなよ」

繋がったまま横抱きにしていた泰菜の体を仰向けにしてその胸に顔を埋めると、法資は眉根を寄せて苦笑した。


「---------ってかやばいな。ほんとおまえ、飽きない」


たまらないとでもいいたげに、組み敷いた泰菜の体に無数のキスの雨を降らせていく。


「籍入れてしばらくは2人きりでもいいと思ってたけど、シンガポール行ったら即行でガキ出来そうだな」
「……そんな……しょっちゅうしてたら、ほんとすぐに飽きちゃうよ……」


冗談半分本気の不安半分に言うと、どういう訳か法資はやけに自信ありげな顔で「それ心配ない」と断言する。


「なんたって今はインターネットで世界中どこにいても買い物できる便利な時代だからな。飽きる心配とかないだろ」

どういう意味なのか疑問に思っていると。

「万一マンネリになっても着るものとか道具とか、おまえがどういうの気に入るのかひとつひとつ試していくのもかなり面白そうだからな」

法資が得意げにどうしようもないことを言ってきた。

着るもの、道具。つまりオトナのアレ的なもののことなんだろうか。考えが行き着いた瞬間、「馬鹿じゃないのッ」と言おうとしたのを見越したように唇を啄ばまれ、塞がれてしまう。


「馬鹿だよ、おまえ限定で」


--------愛してるんだよ。


ささやかれた言葉の甘い余韻が波紋のように体に広がって、まだ天井を知らない熱がじわりじわりと上昇していく





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