続・雨の日は、先生と

だけど、現実はそう甘くなかったみたいだ。


先生が出掛けてすぐ、家の固定電話が鳴った。

迷ったけれど、先生への大事な連絡だと困ると思って受話器を取った。



「もしもし、」



天野です、と言いかけて、ふと口を噤む。

そんなこと、言えないんだ私。

奥さんでもないのに。



「……もしもし？」



問いかけても、返事がない。

間違い電話かな。

そう思って受話器を置こうとしたとき、囁くような声が聞こえて私は凍りついた。



「許さない。」



受話器を置こうと思うのに、手が言うことを聞かない。

どうしても、耳に当てたままの受話器を離すことができなくて―――



「地獄を見せてあげるわ。」



背筋が寒くなって、体ががたがたと震え出す。

ひそめられたその声が、耳から全身に回る毒のように。

私を縛り付けて。



「覚悟しなさい……。」



それだけ言って、電話は切られた。

叩きつけるような音の後に、ツー、ツーという音。



震える手でやっとやっと受話器を置くと、私は途方に暮れた。