続・雨の日は、先生と

闘い

ピンポーン―――



「私だよ!」



先生の声に心からほっとして、ドアを開ける。



「陽さんっ!」



両手に買い物袋をぶら下げた先生の首に、私は思い切り抱きついた。



「どうした、唯。ちょっと待て。これを置いてからだ。」



先生は笑いながら玄関に荷物を置いた。

そして、靴も脱がずに私を抱きしめた。



「陽さあん。」


「今日は甘えん坊の唯だね。」



いつだって、心がふらふらと揺れる私にも、先生は優しくしてくれる。

それが、申し訳ない。

いつも、堂々と立っていたいのに。

変わらぬ自分でいたいのに。



「どうしたの、急に買い物してこいだなんて。」


「何でもないです。」


「いずれにせよ、こんなことろで君を抱けないな。」



ストレートに言う先生に、思わず赤面する。

離れると、先生は私の背中をぽん、とたたいた。



「いたっ、」


「そんなに痛かった?すまない、唯。」



思いがけない反応だったのだろう。

先生は、私の顔を心配そうに覗き込む。


今日、玄関で転んで段差に背中を打ちつけたから。

きっと痣になってるんだろうな。

先生にばれないといいけれど。



「唯が甘えてくる日は珍しいから、今日は唯からいただこうか。」


「もうっ、陽さんったら。」



いつもより大胆なことを言う先生。



「あれ?」



先生の視線が電話に向かっていて、私はぎょっとした。

確かに、毛布が被せてある光景はなかなか異様に見えるだろう。



「あっ、片付けるの忘れてて。」



苦し紛れの言い訳をしながら毛布を取る。

先生は、そう、と言いながら首を傾げた。


とても勘のいい先生なら、すぐに見抜かれてしまいそうで。

本当はは怖くて仕方がなかった―――
< 29 / 73 >

この作品をシェア

pagetop