続・雨の日は、先生と
そしてある梅雨の日。

先生は消えた―――


たった一枚のメモを残して。




唯へ


すまない唯。

私は少しの間、ここを去ることにします。

ほんとうに少しの間です。

すぐに、帰ります。







そのメモを見たとき、予感は正しかったのだと静かに思った。

打ち震えるような衝撃や、怒りとは程遠い感情だった。

むしろ、このままずっと、上の空のような先生と暮らすことの方が、私にはつらかった。


私は、信じるしかない。

先生を信じるしかないんだ。


先生は、どこに行ってしまったのか、とか。

いつ帰って来るのか、とか。


そんなこと、考えたって分かるはずはない。

すべては先生の心の中で、始まってしまったことなのだから。



分かっていたんだ。

普通ではない出会い方をした私たち。

乗り越えるべき壁が、ふつうの恋人同士よりも、ずっとたくさんあるってこと。

だけど―――


私は、決めたから。

先生を愛し抜くって。

その覚悟は出来ているから。


だから、驚かなかったんだ。
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