続・雨の日は、先生と
無事に、母という関門を突破して、居間に来た先生。

すると―――



「お義父さん、お義母さん。こんな、まるでお嬢さんの親のような歳の私ですが。どうか、どうか……お嬢さんとの結婚を、お許しいただけないでしょうか。」



突然、両親を前に土下座をした先生。

な、何もそこまでしなくても……。

それに、お嬢さんの親のような歳って……。



「許すも何も、唯はあんたの子を身籠ってるの。責任取って、ってさっき言ったじゃない。」


「ありがとうございます。」



さらに深く頭を下げる先生。

お母さん、つよし……。



「天野さん、」



ここで、お父さんが立ち上がった。



「俺は唯の本当の父親じゃない。でも、唯のことは実の娘だと思ってる。だから……、今回みたいに、唯を一人にするのはもうやめてくれ!」


「分かっています。今回ばかりは、本当に申し訳ありません。もう二度と、このようなことはないように致します。」



今回のことは、先生だけが悪いんじゃない。

私が、先生を探さなかったのが悪い。

信じると言って、先生を信じ切れなかったのが悪い―――



「何より、唯を幸せにしてやって。」


「はい。」



噛みしめるように、先生は頷いた。


先生は、高校のとき言ってくれたね。



―――「人は、一生に同じ分だけ優しさを受け取るんですよ。」


―――「もし笹森さんが、これまでにたくさん涙を流してきたのなら。笹森さんはこれからもっとたくさんの、優しさを受け取って生きていくんです。」



それなら先生が、私の幸せを。

すぐ隣で、見守っていてくれる?

もう二度と一人にしないって、誓ってくれる?



「陽さん。」


「唯、ごめん、順番が逆だった。」


「いいよ、陽さん。」


「だけどその前に、言い訳をさせてほしい。」


「うん。」



先生と私は、とりあえずもう一度、散歩に行くことにした―――
< 68 / 73 >

この作品をシェア

pagetop