白いワンピースの女
気づくと私はベッドに寝ていた。

リビングに降りると、父と母が話をしていた。

「起きたの? 貧血なんておこして大丈夫?」
母が私を見つめた。

そうか、倒れていたんだ。


***


この話を今になっても母にははなしていない。いったところで信じてくれないだろう。
また仲間うちでも禁句になった。

あの日以来、ワンピースの女は姿を現さなかった。
時間が経つにつれ、あの夜のことは風化していった。

何年か後、私はあの石碑について知った。戦争中、あそこには小学校があったが空襲で焼けてしまったのだという。
私たちが入った場所は防空壕で、沢山の子供が治療もうけられず亡くなったと聞いた。また教師たちは校舎に取り残された子供を助けるため、燃える校舎に入り、ずいぶんと亡くなったらしい。

あのワンピースの女は、きっと教師で逃げ遅れた生徒を探したのだろう。
そして今も探し続けているにちがいない。
< 14 / 14 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

今宵月光の下で君と

総文字数/1,013

恋愛(純愛)5ページ

表紙を見る
北十字学園探偵部

総文字数/70,483

ミステリー・サスペンス266ページ

表紙を見る
時報

総文字数/1,614

ホラー・オカルト11ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop