とびっきり、片思い。
エピローグ*


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カナタさんに会った日から24年が経ち、当時16歳だったお母さんは40歳になった。


今のあたしよりもちょっぴり若かった頃に抱いた、とびっきり片思いの記憶を、東京に出発する前に聞かせてくれたんだ。


今となっては、懐かしい思い出の1つだと言った。


お母さんが東京から金沢に引っ越したのは、大学生の時に旅で何度か訪れた金沢に恋をしたことがきっかけだった。


卒業と同時に東京を離れて向こうで職についた。


そこで、生涯のパートナーとなる人(あたしのお父さん!)に出会い、今は2人でシェアホテルを経営している。


あたしのおばあちゃんは、お母さんが大学2年生の時に再婚をした。相手の人が沖縄の人で、今は沖縄在住だ。


『まもなく品川』という新幹線のアナウンスが流れたから、身支度を済ませ背の高いビルばかりが並ぶ外の景色を眺めていた。


お母さんの思い出の地で、今度はあたしが生きていくんだっていうことが、何となく不思議にも思えた。


ホームに降りて一呼吸着くと、これが東京の風の匂いかと納得するくらい、金沢とは明らかに違う空気が漂っていた。


スマホの連絡帳から中田さんの番号を開いて、電話をかけた。


今日からしばらくの間、中田さんご夫婦の家でお世話になるのだ。


「斎藤 由紀(さいとう ゆき)です。品川に着きました。これから30分後くらいにそちらに着きます」


電話には奥さんの律子さんが出て、「待ってるよー!」と、パワフルな声が聞こえた。


中田さんは、ちょうど野菜の配達に出発したところだったとか。



電話を切ったあと、駅の上の方に表示してある乗り換え案内の矢印を頼りに、途中で迷いそうになりながらも、電車のホームに向かった。




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