とびっきり、片思い。
しかし、その考えの甘さが突き付けられる。
「はやーい。でも、俺も結構速いのよ」
なんて言いながら、余裕気に並んで走っていた。
「はっはぁ?ひふへほ……」
驚きと諦めにも似た境地と色んな感情が交じり合って、変な声をあげてしまったではないか。
「50m走は5.9秒だからな。覚えとけよ、バーカ」
「バカとかいうな!」
下手なウィンクをしてくる。
止まっている車のライトに照らされて、その顔がしっかりと見えるのが気持ち悪い。
0.1秒しか違わない上に、何気に中田の方が速いし負けた。
がっかりと肩を落として走るのをやめると、中田も速度を落とした。
結局さっきと同じようになってしまい、横並びになって歩く。
それが鬱陶しくて、歩く速さをちょっとだけ早めた。