ヒット・パレード



深夜2時30分、第二グループのステージが始まる。


若さ溢れるアイドル、そして華やかなダンスユニットが中心だった第一グループとは趣を変え、第二グループそして第三グループと、夜明けを迎えるまでの間は、夏の終わりに相応しいしっとりとしたバラード中心のステージ内容が組まれている。


平尾 堅、久保田利治、鈴木雅義、山上達郎、井上陽光、松任谷由実子………etc…


いずれも珠玉のバラードをレパートリーに持つ、日本の音楽界を長年支えてきた実力派アーティストばかりである。


観客は、第一グループの時より少し高めの三十代から四十代。大声でアーティストの名を叫ぶような事は無くとも、その胸のうちにはふつふつと静かに湧き上がる情熱のようなものを秘めているに違いない。


人の数だけ音楽がある。


同じアーティストが同じ場所で届けるこの歌も、それを受け止める人が違えばそれはその人それぞれの思い出とリンクし、ある人には懐かしく、またある人には切なく聴こえる。


その脳裏に浮かぶ風景は、時には付き合い始めて最初に行った彼女の部屋だったり、時には海へ出掛けた帰りの車の中だったり、あるいは大好きだった彼と別れた深夜のbarだったり………


彼等の音楽を通じて時は巻き戻され、観客はゆったりと自らの思い出に浸っていた。



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