ヒット・パレード
「大俵さんのお耳にも届いていましたか。ええ、仰る通り我が局50周年の記念番組として、24時間ライブを企画しています」
「そうですか。いや、開局50周年誠にめでたい事ですなぁ」
「ありがとうございます」
ありきたりな社交辞令を交わす本田と大俵………しかし、そんな事を言う為に大俵がわざわざこの場に出向いて来た訳では無い事は、本田も重々承知の上である。
「ところで、本田さん。私のところに出演依頼が来ないのは、一体どういう事なんですかな?」
やっぱり、そう来たか………言葉は丁寧だが、どこか威圧的な口振りで大俵は話の本題へと切り込んで来た。
はっきり言って、本田の出演交渉リストの中に《大俵 平八郎》の名前は無い。
大俵が演歌界の大御所と世間では言われているが、それは彼の芸歴が長い事と音楽事務所を持っている事が大きな要因であり、彼自信はそれほど人気がある訳では無かった。
実際、NHKの紅白にもここ三~四年の間、選考から漏れていたのだ。
ここは、はっきりと言ってやった方がいい。
「大俵さん。わざわざ出向いて頂いたのに、誠に申し訳無いのですが………」
そう本田が言いかけた、その時だった。
突然、本田の携帯電話が控え室に鳴り響いた。
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