ホルケウ~暗く甘い秘密~
しかし、次第にそんなことはどうでもよくなってくる。

一切の気遣いを見せることなく、あくまでも自分の快楽のためだけに腰を振る男を、佐喜は受け入れた。

それどころか、自らも腰を振り、乱れ堕ちていく。


「あッ!ああ、いやッ、あぅッ」


体をしならせ、辺りを憚ることなく甘美な悲鳴をあげ、佐喜はこの原始的な行動に溺れた。

そして絶頂を迎えそうになった瞬間、体内にドプリと何かが満ちた。

ゴポッと、粘着質な音をたてながら、精を放った男根が引き抜かれる。


「種づけ完了。遊んでいるだけあって、締まりは最悪だな」


強姦しておきながら勝手な物言いをする男を睨もうと、佐喜は力を振り絞って、四つん這いの状態から振り返った。

そして、見てしまった。


暗闇の中で妖しげに光る、金色に輝く瞳を。
口元から覗く、鋭い犬歯を。

佐喜は、人ではない“何か”に犯されたのだと悟った。



そう、きっとそれは――――――――――――――



「いやあああああああああッ!」


恐怖に駆られ、必死で叫び暴れる佐喜を、誰かが強い力でおさえつけた。


「落ち着いて!もう大丈夫だから!」


最初は遠く感じた自分を呼び掛ける声が、徐々に近く聞こえてきた。

そして、視界がクリアになり、自分の顔を覗きこむ女性にピントが合った。


「野球場の裏側で倒れていたのを、パトロールしていたここの署の人が見つけたのよ。気分はどう?」


よく見ると、その女性はこの町ではかなりの頻度で見かける制服、警察の制服を着ていた。

突如、記憶がフラッシュバックする。

無理矢理とはいえ、股をしとどに濡らし、ひたすら快感を追い求め、あの男を受け入れた。

おもいっきり、自分もセックスを楽しんでいた。

あれを、強姦だなんて言えるのか?

それだけではない。
佐喜の記憶がおかしくなければ、男の目の色は金色だった。
おまけに、人間のものとは思えないほど鋭い犬歯があった。


(誰がこんな話を信じるの…………?)


言えない。言えるわけがない。

佐喜は、病院に行きアフターピルを貰いたいと申し出た。
そして、それ以外は一切何も語らなかった。

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