紫陽花と君の笑顔
玲太 -REITA-

重荷



 俺はその日、一睡も出来なかった。


 いや、眠った。


 眠ってはいたが、夢を何度も繰り返し、眠りが浅いまま、朝を迎えてしまった。





 『玲くん、大好きだよ。愛してる――』





 瞳を閉じれば、脳裏に蘇るのは舞桜の笑顔。


 耳には、彼女の澄んだ声が終始鳴り響く。





 ――玲くん





 もう、何度その声を耳に刻んでいるのだろう……。


 どれだけ掻き消そうとしても、彼女のことが頭から離れない。


 それと同時に生じる、後悔の念。


 俺の中の舞桜は、もうそれほどまでに俺を占めていたんだ――


 今になって、初めてそう気が付く。


 もう、遅いのに。


 日が昇る前に目が覚めた俺は、つい一年前まで舞桜と共に昼夜を過ごした部屋をぐるりと一周見回し、ため息をついた。


 傍に居ることが、当たり前だと思っていた。


 それは、失われて初めて気付く。


 その存在が、どれだけ大切なものだったかということを――


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