紫陽花と君の笑顔



 バカ野郎。

 お前は本当に大バカだよ。


 舞桜。





 「……言われなくても、やってやるよ」





 ぐしゅぐしゅになった顔を拭い、頭を持ち上げる。


 落ち着き始めた心臓をなで、お前も見てろよ、と呟く。


 そして、しっかりと前を向いて歩く。






 霊園に近づいてきたとき、どこからか歌が流れているのを俺の耳は捉えた。


 聞いたことのない歌だったが、なんとなく、舞桜を思い出すようなメロディー。


 歌詞のフレーズに聞き覚えがあるような気がした俺は、自分の耳だけを頼りに音のするほうへ駆け出した。


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