僕らが大人になる理由


「漫画かよ…」

なんだこのでかい家は。

門から玄関までの距離が長すぎる。

俺は恐る恐る足を踏み入れて、名前を言って、通してもらった。まさか本当に通してもらえるとは…。

真冬は3階に部屋があるらしい。

何故兄に了承して貰えたのかは謎のまま、家政婦さんに案内してもらって、俺は今真冬の部屋のドアの前まで来た。


「では、わたくしはこれで」


家政婦さんはそう言って下へ降りていった。

一週間会っていないだけなのに、妙に緊張する。

え、ていうか、女の子の部屋に普通に入っていいのか?俺。

ああもういい、行け! 俺!


「ま、真冬っ、俺、…光流だよ、開けて欲しい」


そうドアに呼びかけると、物凄い勢いでドアが開いた。

思い切り跳ね返された。


「ギャー! ごめん、光流君!」

「お、俺の美しい顔が…」

「ごめんねごめんね、大丈夫!?」


入って入って、と、真冬は俺をソファーに座らせて、心配そうに俺の顔を隣から覗き込んだ。

その時、俺は一週間ぶりに真冬の顔をちゃんと見たんだ。

くりっとした小動物みたいな瞳、ちっちゃい鼻と口、心配そうに下がった柔らかそうな眉毛。


「真冬……」

「え」

「真冬、お前、元気だったか…?」


――――何だか色んな感情が込み上げてきてしまって、思わず抱きしめてしまった。

さっきの兄と会った直後のせいか、なんだか真冬がとても愛おしくなってしまった。


…良かった、元気そうで、良かった。本当に…。


「光流君、どうしたの……?」

「ん、ちょっと」

「え?」

「もうちょっと。黙ってて」

「………」
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