そのなみだが乾く頃に
涙でぬれた私の目じりに、ふわりと彼がくちづけた。

顔を離したところで、ふたりの視線が、交わる。



「……渡瀬、嫌がらないんだ」

「………」

「抵抗、しないってことは……返事はオーケーってことで、いいわけ?」

「……ん、いいよ、」



その背中に手をまわして、高嶺くんの誘いを受け入れる私は、ずるいのかな。

……それでも、いいや。彼の言葉を、うれしいと、感じたから。

彼の言葉を、信じようって、思ったから。



「……ああ、うん。そういう顔を、させたかったんだ」



そう言ってうれしそうにメガネの奥の目を細める高嶺くんを見て、不意に、胸が高鳴る。

彼の頬を、両手ではさんで引き寄せて。私の方から、くちびるを重ねた。



「……すきだよ、渡瀬。俺のことも、すきにさせるから」

「……うん、」



──ささやかな恋心が儚く散ったその日、私は、一冊のノートを見つけた。

そのノートには、きっと。

私のひみつと、彼のひみつが、つまっていたの。


……この涙が、乾く頃。

私の世界はまた、色を変えているのかも、しれない。










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