【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀


「じゃあ飯食うか」

大和さんの声で立ちあがり


春香さんと腕を組んで歩いていた。



後ろから「春巻き」「半ケツ」と同時に呼ぶ2つのバリトンと大和さんの笑い声。


「隼が春巻きって言ってるよ」吹き出しながら伝えると


大和さんが笑いながら「隼ってわかるんだ」って含み笑い。


「あぁ…わかったね。何でだろうね」


「私はどっちだかわかんないや。もう一回やって」なんて春香さんがいい


「バカ」「アホ」って聞こえてきた言葉にまた笑ったけれど


「隼がバカって言った」わざと睨むように隼を見ると


「すげーっ」って奏くんが笑ってた。


何でと聞かれたらそれは私にもわからない。


2人の声は、確かに良く似ているから。



みんなで食事をしながらもそれが話題で由香里さんも笑ってた。


お母さんの由香里さんでも良くわからなくて間違えるらしく


食事中なのに実験しようなんて奏くんがノリノリで隼も嬉しそうな顔をしていたから実験台になることにした。




指示の通り私は、襖をあけて廊下へ出た。


「結衣」


「奏くんなぁに?」聞こえてきたバリトンに答えると


「絶対音感なの?」と言われたけどそもそもピアノなんて弾けない私がそれは有り得ない。音楽の成績だって普通どまりだ。


何回か繰り返したけど


「結衣」


「隼、まだやるの?」


もうみんなが大笑いで


「終わりだ。結衣の勝ちだ」そう聞こえてきたから、クスッと笑って襖をあけて元の場所へ戻った。


目の前に座る隼が何だか嬉しそうで私もにやけてしまう。


みんなが楽しくしてくれたお陰で


すっかり元気を取り戻し声も戻ってきたけれど


ご飯はほとんど食べられなかった。


だけど「まぁ仕方ないよね。明日には復活じゃない?」


春香さんの笑った顔に


「そう思います」って笑って答えた。
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